オリジナル小説【推理・ミステリー】

鴉の眼 三


「池添さん……。ああ、あのお婆様ですね。もちろん、憶えていますよ。なあ、友也。君も憶えているだろう? 最初はただの小鳥探しかと思っていたら、結果的に殺人計画を未遂に防ぐのに貢献できたんだったね。――それで会得がいきました。この裏メニューをご存知の方は、そうそうおられませんからね」

 

 彼はにこやかに言うと、私の出したカップを彼女の前へと置いて、ティーサーバーからゆっくりと紅茶を注いだ。

 

「まあ、こちらを飲んで体を温めて下さい。心配事は体を冷たくします。そして冷えた体は、思考回路を鈍らせますからね。依頼人には、正確なところをお話し願いたいものです」

 

 依羅は、彼女がとてつもなくゆっくりな動作でカップを口へと運ぶのを、顔には穏やかな笑顔を貼り付けたまま、時折見せる鋭い視線で見つめた。

 

「それで、ご依頼内容は子供さん――それも、男の子ではないかと思いますが――の事でしょうか?」

 

「はい。……ですが……どうして。……うちの子が男だと判ったんですか?」

 

 彼女は少し体を引くようにして、警戒した目を依羅に向けた。

 

「ああ、勘、ですよ。ですが少々付け加えるなら、あなたの顔付き、ですかね。こう言っては失礼ですが、元はきっと穏やかであったろうあなたの顔が、少しきつくなっていますね。それは、男の――それもきっと人懐っこくやんちゃなお子さんを、お育てになってるからだなと思いました」

 

 依羅の答えにフフッと笑うと、彼女は警戒心を解いて、依羅に向き直った。